アロエ栽培における脅威的な害虫

アロエは乾燥に強く、美しいロゼット状の葉をもつ人気の多肉植物ですが、見た目の健やかさの裏側には、微小な害虫の脅威が潜んでいます。とくに深刻なのが、「アロエダニ(Aceria aloinis)」と、近年新たに注目されはじめた Dolichotetranychus 属のダニです。

アロエダニ ― 古くから知られた病害虫

アロエダニはエリオフィヨイド(Eriophyidae)と呼ばれる微小なダニで、体長はわずか0.2mm程度。肉眼ではまず確認できず、被害は主に葉の変形や腫れ、表面の形質異常として現れます。

アロエダニによる形質変異

このダニは葉の内部組織を吸汁することで、ロゼット全体の見た目を損ない、重症化すると生育点の変形や生長停止、果ては枯死に至ることもあります。温室栽培やコレクション株ではとくに問題視され、廃棄、切除による物理的処置や選択的な殺ダニ剤の使用が対処法として用いられてきました。

花序に浸潤したアロエダニによる影響

Dolichotetranychus属

2021年にCactus and Succulent Journalに掲載された研究報告「A New Pest of Aloes」(Vachajitan & Harvey)において、アロエ属植物に対してまったく新しいタイプのダニ被害が報告されました。

このダニは、Dolichotetranychus 属に分類される非常に小さなダニで、葉の付け根(葉鞘)内部に潜り込み、外見からは気づきにくいという特徴があります。アロエだけでなく、ファレノプシス(胡蝶蘭)などにも寄生歴があり、温室環境での発生が特に懸念されます

被害の実態

  • 外見では初期に気づきにくい
  • ロゼットの中心部の葉が黄化・縮小・変形
  • 進行すると葉が崩れ、株全体が枯死

このダニの特に厄介な点は、被害が一見して病気や水切れに見えること。また、葉鞘の内部に隠れるため、通常の薬剤散布が届きづらいという問題があります。

ドリコテトラニクスに害されたと思われる葉鞘の一部

対処法はあるのか?

現時点では、このDolichotetranychus 属に対して有効であると証明された薬剤は存在しません。また、既存のハダニ用薬剤がどの程度効果があるかも十分に検証されていない状況です。

ただし、以下のような対策が有効である可能性も一定程度あるかもしれません:

  • 殺ダニ剤
  • 感染株の隔離・破棄
  • 予防的な薬剤ローテーションの導入

栽培者としてできること

Dolichotetranychus 属ダニに対しては、「早期発見」「隔離」「予防を含めた総合的管理」が今できる最善の対策です。
アロエダニも含め、株元の通気確保、導入時の隔離観察、定期的な葉の点検が基本です。

とくに数百鉢、数千鉢のアロエを管理している環境では、症状が出た段階ではすでに周囲への拡散が起きている可能性が高く、温室全体への一斉対処が望ましいと言えます。

ドリコテトラニクスと思われるダニの被害を受けた株。成長を止め芯から腐り枯れてしまう。

おわりに

アロエ栽培におけるダニの脅威は、外見上の美しさだけでなく、生育そのものを根底から脅かす深刻な問題です。
今回紹介したDolichotetranychus 属ダニは、現時点では防除法も確立されておらず、農薬登録もされていない未知の害虫ですが、今後の研究と情報共有によって対応が進むことが期待されます。

栽培者としては、最新情報に目を向けつつ、自らの現場での観察と記録を積み重ねていくことが、最大の防御策となるでしょう。

参考文献